風邪ひいたぜ
それで、御在所岳というところは風がビュービュー吹いてすごい寒いんですよね。
クライミングは登山と違ってパートナーが登ってるときはじっとしてなアカンのですごい寒かった。
それで、帰って来たら家のカギが無いのね。
必死にかばんひっくり返して探したら、中身全部出した最後に、ざっくの底にカギが入っていてホッとした。
なんでこんなとこに入ってたの?
カギを開けてホッとしてたら向かいの部屋のドアが開いて、引っ越してきたおばさんが出てきて挨拶された。
おばさんが「●●ちゃん出てきなさい」と言って部屋の中から息子さんらしき人を呼んで
「この春からこの子がR大学に入学して引っ越してきました。」と挨拶される。
引っ越してきたのは息子さんの方か。
廊下に山道具をぜんぶ散らかしているものだから、なんだか情けないやらだがそのまま応じる。
「学生さんですか?」「違います。すみません、けっこういい歳なんです。」
お母さんが廊下にちらばる私のカラビナ類を見て
「これは山のぼり、ロックの方ですか?」とお母さん。
「あ、よくご存知で」と言うと、「どこの山ですか?」と案外突っ込んで聞いてくるお母さん。
「御在所っていうところです」「ああ、御在所、有名ですよね。」
よく知っているなあと思ったら、「私岐阜の生まれなもので」ということであった。
そして息子さんはこのやりとりを終始ニコニコ聞きながら一言も発さない。
早く部屋にひっこみたいとう風で、居心地のわるそうにして突っ立っているのであった。
「じゃあ大学がんばってください」と息子さんに言うと、お母さんは息子の部屋の向かいの住人がそれほど怪しいものでもないと思って安心してくれたのか
「お疲れのところ、どうもお邪魔しました」と言って二人で部屋へ戻っていったのであった。
翌日、私は風邪をひいた。